what I have to do

by 五味 洋子

色んなひとやモノ、コトに会いにいくと決めた2016年。
夏の終わりに山形へいってきました。
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案内してくれたのは、リペア家具デザイナーの須藤修くん。
旅のすべては、いっしょに行ったやまなしのアートディレクターがとても丁寧に書いてくれたので、そちらで。(他人任せ)

★BEEK blog
山形をいく

わたしは、3日間の旅を通して感じたことを、つづります。
とはいえ、いっしょに旅をした兄と内容がかぶりそうな気も。。まぁしょうがない、同じものを見て、聞いて来たのだから。
今回山形に行くことが決まって、兄がどうしても行きたいと言った酒蔵がありました。それが山形正宗を醸す、水戸部酒造さん。普段は工場見学は一切受付て居ませんが、今回水戸部社長のご好意で特別に蔵見学をさせてもらいました。

−いいものは、いい空間から生まれる。

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うっとりするような、この空間。
日本酒を発酵させるタンクの並ぶ、醸造蔵なのです。
これまでの蔵の概念の覆す、美術館のような、そんな空間です。
水戸部酒造さんでは、日本の伝統産業である日本酒を醸すというのは、日本の文化を伝えること。と考え、ものづくりだけではなく、ものを作る場、そこで働く人のことを最優先に考え、空間づくりをしています。この美しい蔵も、蔵人さんが快適に作業ができ、日本酒がおいしく醸されるためのもの。
蔵には、伝統的な建築技術も取り入れられていました。
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これは、蔵の入り口の「黒漆喰」
強アルカリ性の漆喰には、発酵を邪魔する雑菌や腐敗菌たちを寄せ付けない働きがあります。そして、この黒漆喰、初めてみたのですが、とても手間のかかる技法でつくられていました。5回の下塗りを経て、仕上げていくそうなのですが、黒の工程は菜種油を燃やしたススを漆喰に練り込み、壁に塗った後に絹布で磨きます。そして、徐々にツヤが出できたところで、手のひらで磨き上げて完成となります。この職人技を残していくことも、蔵の役割であると、いうのが水戸部酒造さんの考えです。か、かっこよすぎる。
そして、この漆喰の手触り本当に気持ちよかったです。

ーまるで美術作品のような

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醸造タンクの上にそれぞれスポットライトが設置されていました。日本酒は蔵人たちの作品。だから、しっかりタンクのなかも見えるように、と。
ものづくりに真摯に向き合っている姿に何度も何度も胸を打たれました。他の蔵と大きく違うのは、ものづくりだけではなく、ものをつくる現場での美学、そしてその素晴らしい伝統文化を継承している姿勢です。日本の素晴らしいものづくりの文化や技術を日本酒というプロダクトを通して、伝えていっているのです。あーかっこいい。

ー育まれる美意識

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蔵が変わったら、そこで働く蔵人さんの意識も変わってきたそうです。伝統建築に囲まれた素晴らしい空間、だったらそこを綺麗にする箒も、伝統的なものを取り入れようと、現場の人から提案があり、蔵には特注の《江戸箒》が設置されていました。空間が、そこで働く人の意識までをも変えてしまったのです。す、すごい!もうこの話くらいから、感動が止まらずに、勝手に感極まっていました(なんでやねん!誰やねん!)

ー己の役割、すべきこと

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会社にはそれぞれに役割があると思います。
水戸部酒造さんはきっと、日本酒を通して、発酵文化だけでなく日本の伝統技術、その美学を伝えること。
じゃあ、五味醤油は、、、
私たちの役割は、みそを通して、手前みそや発酵文化を広めること。そして、まちのみそ屋として、今後どうしていくべきなんだろう。兄のブログにもあったように、いま工場の老朽化という問題が目の前にあり、蔵の今後のことと向き合っている。わたしが勝手に思ったのは、もっと拓かれたみそ屋(みそ蔵)になっていくことなんじゃないかなと。
うちは割と甲府の中心にあって、山梨のなかではシティにある。旧甲州街道沿いで、蔵は奥まったところにあるから、店の奥に蔵があることも割と気づかれないし、知らない人も多い。これからどんどん、零細企業の専門店は厳しくなっていくはず。だったら小規模のまちのみそ屋にこそできる、ものづくりの伝え方、文化の伝え方があるはず。
手前みそづくり体験ができるKANENTEもその1つ。みそづくりという体験を通して、食文化に触れてもらいたいという想いと、みそ屋という専門店にくる敷居をさげるきかっけのような。だから、その延長線上に、蔵の改造もなればいいな。例えば、誰でも気軽に発酵蔵が覗けるようにするとか、、いつも口にしている調味料をもっと身近に、愛着を持ってもらえるような工夫が蔵の改装でできたらおもしろそうだな。
自分たちにできることなんて、限られている。高が知れている。だったらそのなかでどれだけのパフォーマンスをするか。もっと兄と話をしよう。水戸部酒造さんで体感したこと、山形で見てきたモノコトをもっとアウトプットしていこう。
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こんな考えるきかっけをくれた水戸部社長と、蔵案内をしてくれた結城さんに心から感謝です。とっても貴重な工場見学から得たものはものすごく大きいです。本当に本当にありがとうございました!!くるりが好きでよかった〜〜〜〜〜〜!!!!岸田さんありがとー。

そして、今回山形へいくきっかけとなった修くん!どうもありがとう。
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家具のリペアデザインだけでなく、YAMAMORI PROJECTとして、山や森、県産材と向き合う取り組みをしています。あの山がね〜と。目の前にそびえ立つ山々をたのしそうに紹介してくれる姿が印象的でした。溢れ出るやまがた愛!いく場所、会う人、口にするものすべてがもう、さいっこーーーーーーでした。
大都会東京にいたときよりも、田舎の山梨に帰って来てからのほうが、なぜか人とのつながりが深く広くなっている。全国にともだちができて、会いに行きたい人、会いに来てくれる人がたくさんできた。育った場所、暮らしている環境は違えども、同じ方向を向いているってだけで関係って築けていけるのだから不思議だ。
まだまだ会いにいく旅は続きます。
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水戸部酒造
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HP http://www.mitobesake.com/
お酒は川原子酒店(天童市)で買えます。

この記事を書いた人 五味 洋子

発酵兄妹(妹)三兄妹の末っ子として生まれ、高校卒業まで甲府市で育つ。東京農業大学醸造科学科を卒業後、2009年ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや、新規事業部で商品企画を担当。2013年山梨へUターン。2014年五味醤油入社。六代目を務める兄仁と二人三脚で奮闘中。WEBマガジン〔大人すはだ〕コラム連載。YBSラジオ〔発酵兄妹のCOZYTALK〕出演中。