tell told told

by 五味 洋子

小学生のとき私が6年間つかっていたランドセルを母がとっておいてくれたらしく、久しぶりの対面を果たした。

買ってもらったのは今から24年前。
押入れの奥で眠っていた時間は18年。
使ったのはたった6年。
6歳になったら買ってもらう毎日使うカバン。やんちゃな時期に使うから作りはしっかりしている。私は小学校6年間背の順はほとんど1番前で、クラスメイトよりカラダが小さかった。初めて背負ったランドセルはとっても大きくて硬くて、、、18年ぶりに見たランドセルはあの頃より小さくて柔らかくて、6年間がんばってくれたせいなのか、なんだかとても誇らしげに見えた。
当時は知らなかったけど、母が娘にもってほしかったランドセルだったということ。
クラスメイトはみんな真っ赤でピカピカの縦型のランドセルをつかっていたけど、私はえんじ色の横型のもの。人と違うものでちょっといやに思ってしまったことも。

クタクタになったカバンを目の前にした今、
小学校6年間をどんな風に過ごしてほしいか、その大事な相棒に選んでくれたランドセルが両親からの大事なプレゼントであったと今知った。今更か。
そんなランドセルとの再会で始まった1日。

この日は、支援学校の子どもたちが校外学習のために五味醤油にくる日だった。今日のために先生たちと何度も打ち合わせをしたけど、子どもたちが実際に来た時、自足歩行がままならない子が大半で、正直不安な気持ちに襲われてしまった。私が伝えることわかってもらえるかなって。そんな不安な気持ちで、みその話を初めて【てまえみそのうた】を流した瞬間、子どもたちが目を輝かせ、それぞれのリズムに乗りながら楽しそうにカラダを自由に揺らしながら歌い初めてくれたではないか!
わかってもらおう、じゃなくて一生懸命伝えれば、届くんだって。急に胸があつくなった。もちろんそれは、歌というキラーコンテンツがあるからっていうのもあるけれど。

私は先生でも、研究者でもない、まちのみそ屋だ。
今まで、親が子どもにすることは見返りは求めない、一方通行のものだと思っていた。でも今朝のランドセルもあったりで、大人になった今、親から知らず知らずのうちにもらった愛情、気持ちや想いはしっかり届いて育っていて、自分の確かな礎になっていると改めて知った。まちのみそ屋の立ち位置もそんなものかもしれない。みそを作ること、売ること、伝えることでわかってもらおう!じゃなくて、伝えっていってその結果、誰かの味覚や、記憶に残ればいいなって。


うーん。ちょっと暑くるしいブログになっちゃった。
大事なのは伝え方、自分がいいと思って楽しいと思ってればしっかり伝わるのかな。そんな気がした。だから愛をもってたのしくね。
なーんて。

この記事を書いた人 五味 洋子

発酵兄妹(妹)三兄妹の末っ子として生まれ、高校卒業まで甲府市で育つ。東京農業大学醸造科学科を卒業後、2009年ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや、新規事業部で商品企画を担当。2013年山梨へUターン。2014年五味醤油入社。六代目を務める兄仁と二人三脚で奮闘中。WEBマガジン〔大人すはだ〕コラム連載。YBSラジオ〔発酵兄妹のCOZYTALK〕出演中。