【鹿児島旅02】クラシック節に逢いに。
鰹節は世界一硬い発酵食品
鰹節の日本三大産地である、鹿児島県枕崎市に行ってきました。(鰹節三大産地;焼津(静岡)、指宿、枕崎(鹿児島))
枕崎市は漁師町なのですが、足を踏み入れた途端、街のそこらじゅうに、鰹を燻すための、薪があるのが印象的でした。市内には50件もの製造工場があるそうです。
今回見学させていただいたのは、金七商店さん。
本来のクラシックな製造方法で、更にカビ付け発酵させる工程で、クラシック音楽を流して本枯節をつくっています。
NHKの番組「鶴瓶の家族に乾杯」でたまたま見たり、友人からもらったクラシック節があまりにもおいしかったり、そして四代目である瀬崎さんのお話を伺いたく、念願叶っての訪問となりました。
そして、恥ずかしながら鰹節の製造現場を見たことがなかったこともあり、見学するならば本枯節をつくっている生産者さんを訪れたいという強い気持ちもありました。(受け入れてくださった瀬崎さんありがとうございます!)
この日は連休の最終日、休業日のも関わらず対応いただきました。
そして、なんと鰹をさばくところから見させていただきました。
無駄のない動き、見事な包丁さばきは、まさに職人技。
【生切り】
まず、頭を切り、腹皮を切り、内臓をとり除いた後、3枚におろします。
更に血合い部分を境に背側と腹側とに切り分けることで1尾より4本の節にあっという間に分けられました。
背節は雄節(おぶし)、腹節は雌節(めぶし)とも呼ばれます。
鰹節にはならない、内臓や皮などの不要な部分も回収されます。捨てるところはないそうです。
この節たちがこれから鰹節になっていきます。
【籠立て】
煮籠という籠に1本ずつ並べていきます。
【煮熟】
お湯を入れた写真の釜に煮籠を入れて、鰹節を煮ます。(残念ながらこの作業は見れず!)
【骨抜き】
煮上がった鰹節は、まだ骨も残っているものもあり、なんと1本ずつ手作業で骨抜きをしていくそうです!!!!
身を傷つけないよう1本1本手作業で行うと話を聞いただけで、その尊い作業に気が遠くなってしまいそうでした。
【修繕】
伝統的なつくりをした「枯節」で大切なのは、形。
この作業は金七さんの要とも言える大事な工程です。傷ついてしまった部分や亀裂などに、すり身を塗り込み穴を1つ1つ埋めていきます。この修繕の作業はどこの蔵でもしている作業ではないでそうです。
【焙乾】
ただ、カゴに並べ燻すのではなく、まっすぐの形保てるように工夫しながら並べていきます。どの作業も気が抜けません。
3階立ての建物になっていて、1階から順に移動しながらじっくりと燻されていきます。
地下の部屋で薪を燃やし火を起こします。
天井は網目になっているので、煙がじっくりと上階へ上がるようになっています。
部屋の思い扉を開けた瞬間、すごい煙、、、この部屋で目を開けることもままならないなか、薪を焼べる作業もしなくてはいけません。目がぁ〜としょぼしょぼ突っ立ている私を横目に瀬崎さんは低姿勢で、なんなく薪をくべていました。
じっくり燻して水分を飛ばした鰹節
この燻しまで行った節を【荒節】といいます。カビ付けをしていない鰹節です。
表面は黒くゴツゴツしていて見慣れないものだと思います。
それもそのはず、荒節は、加工用として主に削り節やだしパックなどの原料になります。
【表面削り】
カビがつきやすいように表面を1つ1つ削っていきます。
【カビ付け】
節に鰹節カビを付け、室で貯蔵していきます。
カビをつけて発酵させる理由は2つ。
発酵中に節の中の水分を分解して乾燥させること。
表面の脂肪分を分解すること。この発酵という過程があることで、動物性でありながら澄んだ透明な「だし」になります。
クラシック節の特徴な、伝統的なクラシックな製法であることと、もう1つ!
室でモーツァルトのクラシックを流し、発酵中の鰹節に音楽を聞かせます。
鰹節カビの発育がうまくいくように、温度や湿度、他の雑菌が生えないような、隅々まで管理された室で鰹節を発酵させる蔵もあるそうですが、金七商店さんは、おいしい鰹節をつくるために、鰹節も、それを作る職人にも気持ちいい環境づくりを徹底しています。
私も、自分の蔵の1番のパワースポットというか、居心地のいい場所はみその木桶が置いてある場所です。つまり発酵している場所。大事な発酵する場所は心地よい、気持ちがいいってすごく大切な気がします。科学的な根拠もなく、感覚的な話で申し訳ないですが、おいしいものが生まれるには、発酵する環境はものすごく大切だと思うのです。蔵元にしろ、おうちのキッチンにしろ。
話が脱線しちゃいましたが、カビ付け、天日干しという作業を繰り返していきます。
これが枯節(鰹節カビが生えた鰹節)
鰹節同士を拍子木のように鳴らしても、もちろん割れませんし、この時の音で発酵具合もチェックします。
カビが表面にびっしり生えた鰹節を割ってみると、、、
まるで宝石〜!鰹の旨味のつまった宝石〜〜〜〜!!!!
形ももちろんですが、このよだれが思わず出てしまいそうになる美しさ。。日本の伝統文化の底力にまたまた感動した瞬間です。
四代目の瀬崎祐介さんと、息子のリクくんに案内をしてもらいました。瀬崎さんが代替わりしたときのお話、自分がつくりたいものと現場とのギャップ、様々な葛藤があったことこれまでのお話を赤裸々にお話いただきました。そんな瀬崎さんの背中を間近で見ているリクくんが五代目になりどんな鰹節をつくっていくのかいまからとっても楽しみです。
生産者はただ作るだけではなく、時代や文化を繋げていくことも求められていると思います。瀬崎さんはまさに本物の鰹節の文化を伝えているお方。私は製造現場には入っていないので、職人ではないのですが、さまざまな場に出向き伝える活動をしているので、伝統を継承してくださっている職人さんにたくさんの敬意を払いながら、正しいことをしっかりと伝えていく責任があるなと改めて思いました。
瀬崎さん貴重な学びの場と時間をありがとうございました。
そんなかつお節が結んでくれたご縁で先日渋谷のかつお食堂へ。
「わたしの前世はかつお」という同年代のかつおちゃんというかつお愛が半端ない女将が、目の前で鰹節愛を語りながら、鰹節を削ってくれます。
かつお食堂
かつお愛で溢れたかつおちゃんの食堂!!
https://retty.news/35218/
五味醤油で買えます
この記事を書いた人 五味 洋子
発酵兄妹(妹)三兄妹の末っ子として生まれ、高校卒業まで甲府市で育つ。東京農業大学醸造科学科を卒業後、2009年ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや、新規事業部で商品企画を担当。2013年山梨へUターン。2014年五味醤油入社。六代目を務める兄仁と二人三脚で奮闘中。WEBマガジン〔大人すはだ〕コラム連載。YBSラジオ〔発酵兄妹のCOZYTALK〕出演中。