【やまご新聞WEB】02

by 五味 洋子

10月に発刊された第2号やまご新聞の特集記事をWEBで紹介します。

文化を紡ぐまちのみそ屋

第2号の特集では、みそや発酵の話ではなく、五味醤油が行っている取り組みの話をしようと思います。(早速脱線してすみません)

明治元年創業、社名は五味醤油ですが、35年前に醤油製造を中止しました。現在は、「甲州みそ」の製造と「手前みそ」づくりの普及活動を行っています。明治、大正、昭和、平成、そして令和と6代に渡り、約150年この地で暮らし、醸造業を営んできました。

「100年先も愛される街のみそ屋」をコンセプトに、食の体験を核とした「KANENTE」の運営、現味噌蔵の一角である元醤油蔵をリノベーションした「Tane」をオープンするなど街と一緒に歴史を刻んでいくことを大切にしています。

食の体験スペース

2016年2月みそ蔵に隣接して、食の体験スペース「KANENTE」を新設。

「手前味噌」という言葉があるように、昔はどの家庭でも手作りみそを作っていました。その「手前みそ文化」を残すべく、またみそに限らず衣食住をキーワードに人が交流できる公民館のような空間を目指しています。(感染症拡大予防のため、3月中旬から9月までイベントは自粛)

「KANENTE(カネンテ)」という名前は、1960年代の始めのころまで使われていた「金手(かねんて)」という町名から取ったものです。「やまごみそ」の屋号である「山」のカタチをモチーフにしたユニークな建物の造りも目をひきます。

毎年12月から春まで「手前みそ教室」を開催しています。材料はすべてこちらが用意するので、お客さんは事前に予約をして時間に来てもらい、仕込みを行います。大豆は既に煮てあるところからスタートし、材料のこうじと塩と合わせていきます。参加者の年齢層も様々。お母さんに抱っこしてもらってくる赤ちゃんから、最高齢は95才と幅広い年代の方と集まり、楽しみながらみそ仕込みを行います。仕込んだみそは各自家庭に持ち帰り、半年以上じっくり発酵させてできあがりとなります。
これまでは1回15組で開催していましたが、今年は新型コロナウィルスの感染予防のため人数を半減して開催する予定です。教室以外にもみそ仕込みに必要な材料キットも販売しているので、おうち時間のお供にいかがでしょうか。みそ仕込みの話は次号のやまご新聞でじっくりお伝えしようと思います。

かつては当たり前だった、自家製したものを自分で食べる文化。手作りを大事にすることや、発酵を取り入れることで、暮らしをより楽しむお手伝いができるようこれからもイベントを企画していく予定です。

元醤油蔵がコーヒー屋に

2017年5代目から6代目に代替わりするタイミングで、35年間放置されていた元醤油製造場(現みそ蔵の一角)をリノベーション。醤油の原料である麹を製造する麹室を取り壊し、片付け、屋根と壁の改修工事を行いました。

新たに生まれ変わったこの空間を「Tane(タネ)」と名付けました。これまでこの地で150年に渡り商いをしてこれたことへの還元の意味を込め、街に新たに拓いた場所にしていくこと、暮らしを豊かにする種となるように。

現在はAKITOCOFFEE Taneとしてオープン。元味噌蔵とTaneを仕切る壁は古材を利用したパッチワークの壁。相互が見えるようになっています。
元々は蔵という閉ざされた空間でしたが、改修工事をして新たな事業者が入り、街のと接点をもつ場所となりました。変わらないこと、変わること、繋いでいくことを大切にこれからもこの街と共に。

この記事を書いた人 五味 洋子

発酵兄妹(妹)三兄妹の末っ子として生まれ、高校卒業まで甲府市で育つ。東京農業大学醸造科学科を卒業後、2009年ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや、新規事業部で商品企画を担当。2013年山梨へUターン。2014年五味醤油入社。六代目を務める兄仁と二人三脚で奮闘中。WEBマガジン〔大人すはだ〕コラム連載。YBSラジオ〔発酵兄妹のCOZYTALK〕出演中。

こちらの記事も一緒にどうぞ